カタカタと動き始めた馬車。


10年。

10年…

長かった。

今日のこの日のために、血のにじむ努力をしてきた。

まさか共にする相手がギッシュだとは思わなかったが。

とにかく。

頑張るしかない。

やるしかない。

もう後戻りなんて出来ないんだから…。



「なーに感傷に浸ってんだ?」

「…あなたは解っているの?もうここには戻れないかもしれないわよ?」

「戻れないなんて思ってない。」


珍しい鋭い声色に私はギッシュを見た。

「俺は、戻れないなんてコレっぽっちも思っちゃいないね。」

本当に勝ち気な男。
何にも知らないくせに。