「ギッシュの旅路に幸あらんことを。」
広い部屋…
揺れる炎…
アレの旅立ちを見守る多くの人々…
「共にレイをつけよう。」
私は冷静だった。
「ギッシュよ、そなたは大きな命を背負って旅立つ。あらゆる苦しみに耐えねばならぬ。行けギッシュよ。そしてこの地へ光を…。」
「はい。必ずや。…レイ、行くぞ。」
こちらを見る黒髪から覗く瞳。
私は立ち上がって側にあったボーガンを手に取った。
これでこの館も見納めだ。
私は頭を下げて外へと向かう。
ギッシュを、食料やら御守りやらを渡す若い娘が取り囲む。
もしかしたら、もう二度会えないかもしれないのだから当然だ。
私は独り、慣れ親しんだ桟橋に立ち、
乱反射する海を見ていた。