ヌイを鍛えていたら、いつの間にか昼時になっていた。
ギッシュはレイが作ってあった握り飯を広げた。
これもこの5年間でやっと手に入れたギッシュだけのご褒美なのだ。
…なのに。やっぱり。
今日はいつもより多い。
ヌイの分だ。
『おら。ガキンチョ!食え!』
しぶしぶヌイに握り飯を渡して食べ始める。
相変わらずヌイは、どこか脅えたままで、少し離れた場所で食べている。
ギッシュは、それも性格かと思い諦め始めていた。
『おい見ろよ!泣き虫ヌイが、ギッシュに剣教わってるみたいだぜ!』
『本当だ!ハハハ!弱虫ヌイが剣なんて触ったら、怪我しちゃうぜー?』
『そういえば今日は、ヌイのかーちゃんがルブラに行ってるんだ!一人で留守番できねーからギッシュにくっついてるんだよ!』
ハハハ、とヌイをバカにしている悪ガキを、ギッシュは興味無さ気に見つめていた。
だが、いくら言われても何も反抗しようとしないヌイを見て、だんだん腹が立ってきた。
反抗しないから余計いじめられるのに。
『知ってるか?こいつかーちゃんに貰った、変な青い石をいっつも持ってるんだぜ?』
『石?…これか!?』
『ただの石ぢゃんか。へへっなげちまおーぜ!』
悪ガキの1人がヌイのカバンから石を取り出し投げようとした瞬間だった。