―…それから時は流れ5年後


ギッシュは20歳となり、すっかり大人の男になっていた。
整った顔立ちに凄腕の剣士ともなれば、村の女たちも放ってはおらず、そういった意味でも一人前の男になった。
更には、王都の騎士としてのお呼びがかかるほどルフェンダのちょっとした噂になっているようだった。
だが、ギッシュはそういった話には一向に興味を見せず、魔王討伐を目標として日々クオーナで腕を磨いていた。

『ねぇ…ギッシュ?どうして魔王討伐なんて行くのよ…誰かがするのを待てばいいわ?王都の騎士をしたほうが良いわよ?私は着いていくつもり…』

色めく女の視線を気にする様子は全く無いギッシュは、いそいそと床から抜け出し剣を手に取る。

『騎士なんてガラじゃないんだよ、俺は。それにもし仮に騎士になったとしても、お前を連れて行くことは無いさ!じゃっ!』

また同じ返事ね、とうなだれる女を尻目に颯爽と部屋を後にする。


目指すは彼女が待つ場所。





『ハッ!』
気合いの入った声と共に何かを殴る音が聞こえる。
いつものことだ。

『レイ!悪い悪い!』


ギッシュが来たのを見ると、彼女は振り返る。

『遅いわよ、ギッシュ。また女遊び?いい加減にしないと、そのうち痛い目見るわよ。』

長い金髪を高く結んで振り返る彼女は、もちろんレイだ。
レイも17歳になり、すっかり美しい女に成長していた。
初めてあったときとなにも変わらない意志の強そうな瞳は、ギッシュを優しく見つめる。

『別に好きで遊んでるんじゃないんだぜ?あっちがどうしてもって言うんだから仕方ないだろう!』

『まぁ、私には一切関係のない事だから、どうでもいいわ。』

サラリと傷つくことを言われるのにもだんだん慣れてきた。

そして2人は日課となった鍛錬を行う。