ボーガンの先を白髪に合わせる。
風は弱い。
イケる。
矢を放つと同時に黒髪が、ネオの後ろに回る。
ネオはそれに気をとられて、
全く気づかない。
「カハッ…!」
ネオの左胸に刺さる矢。
「あばよ!」
一瞬の隙をついて、ギッシュが剣を振るった。
ザンッ!
月の影に
飛沫がうつる。
―…致し方なかった。
「これでルブラはしばしの平和を迎えるわ。お手柄よ、ギッシュ。あなたはやはり、真の勇者になりうるわ。」
やはり、ね。
あなたは勇者なのね。
どうやら、命を果たせそうよ。
「よっしゃ!…にしても、お前大丈夫か?何でボーっとしてたんだよ。」
「別に…ただ色々考えたくなったの。」
「あんな時にあんな場所で、考え事なんかするなよ!危ないだろ!」
「あなたがネオを引き付けておかないのが駄目なのよ。」
うっとなるギッシュ。
「だいたい、ちょっと弾がかすったくらいで、いちいち私の所に来なくていいわ。すぐやられるほどヤワじゃないわよ。」
更に、うっとなるギッシュ。
「解ったらさっさと後片付けして。私は先に宿に行っているから。」
ギッシュにとりつくしまも与えず、私は宿へと向かう。
頭上を鷹が飛んでいく。