──ここは?
格子模様の穴の隙間から新月が悲しげに照り出されている。
例の鎖のようなもので身体が十の字に柱にくくりつけられている。
そして、一人の少女が時計を気にしながら誰かを待っている姿が瞳に映る。
陽菜?
すると、ここは神社?
『ご名答。
それも神が祀(まつ)られている社の中よ。
最高に良いシチュエーションよね。
末永くお幸せにね』
私と同じ顔の悪魔は、陽菜の居るところに行ってしまった。
陽菜、私は此処よ?
ねぇ、気付いてよ!?
『美しい。
ずっとソナタが来るのを待っていたよ』
私は、貴方の妃になんかならないわ
『永遠の命を得られる、こんな素晴らしい事は無いだろうに』
永遠なんていらないわ
お願い、陽菜。
時間がないの。
冷たく凍ったような指が頬に触れられる。
この人が悪魔なんかじやなかったら、ドキドキするのかな?
綺麗に整った顔立ちに一瞬見惚れてしまう程のもの。
黒いベールを捲られ、徐々に近付く血の気がない蒼白した顔。
陽菜、陽菜ちゃん、陽菜様!!
『ソナタの声は誰にも届かなぬ。
さぁ、キミの生ある唇を私におくれ』
オデコに、耳に、頬に、ゆっくりとKissをされる度に身体が凍りつく。
嫌よ。
首筋に、肩に、そしてオフショルダーのドレスの上から胸にまで、氷のような唇に吸い付かれる。
身体の感覚が麻痺し始めている。
陽……菜……
──ギィィ
「千郷を返してよ!!」
『よく、見破ったな。
しかし、もう手遅れだ』
「千郷は私が守るんだから」
陽菜、来てくれたんだね?
『戯けた言を。
彼女はたった今から私の妃になるのだよ』
「形だけのものでしょ? そんな事したって、心までは貴方なんかに届かないんだから」
陽菜、ありがとう。
私はずっと貴女と一緒にいる……からね。
意識が遠退く。