不気味なほど真っ黒い箱。

恐る恐る箱の蓋を開ける。

一番上に手紙の様なカードが一枚乗っかっていた。

何?

怖さ半分胸に抱えたまま、カードに目を留める。

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拝啓 千郷様

秋空も爽やかな季節となりました。
変わりなくお過ごしの事と存じます。

本日は、貴女を迎えるに相応しく
見事な新月日和です。

お祝いの品を送ります。

本日18時に、この衣装を身に纏い
月野神社にお越しくださいね。

千郷様の秋が実り深いものになるように
願っております。


敬具
美郷

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手紙の下に綺麗に畳まれている服を取り出すと、刺繍が施された真っ黒のドレス。
とベール?

新月?
美郷?

これって──

忘れていた記憶が一気に蘇ってきた。

あれは、夢なんかじゃなかったんだ。

今、目の前にある衣装も手紙も全て実在するもの。

18時?

行かないわ。

だって、私は陽菜と……お祭りに……行くんだから。

届いた物を、しっかり密封して庭の隅に置いてきた。

陽菜、私ずっと貴女と一緒にいたいよ。

こんな黒いウエディングドレス、たとえ命がなくなることが義務付けられたって、

絶対……着ないんだから。

どうしたらいいのか解らず、ベッドにひいてある布団に潜り込んだ。

まだお日様が東から高く空へ上がろうとしている刻。


どのくらい時間が経ったのか、烏が鳴く声がやけに響き渡る。

 トン トン トン ……

ゆっくり階段を上ってくる物音。

 ──キィ

静かにドアが開いた。