「熱は、下がったみたいだな」


俺は眠気眼を擦りながら、彼女の額や首に手を当てた。



彼女は俺を見つめたまま、ジッとしていた。



「ありがとうございます。野良猫さん」

「熱が下がったんなら、さっさと自分家、帰れ」

「それは無理です!」


彼女は慌てた様に、冗談めかしに、眉を吊り上げた。




「わたしは貴方に拾われました。だからもう帰りません」

「はっ?」


俺の目が点になった。



目の前の彼女は、至極真面目に言葉を続けた。



「今日から、わたしを貴方の家族にしてください」



そして言い終わると

キャッ!何て、照れたように声をあげて

真っ赤になった顔を両手で隠した。



俺は目の前の彼女に、同情めいた眼差しを向けていた。