ゆきを抱き寄せてみると、男は驚き彼女は赤くなって俯いた。


「嘘を吐くな。ゆき、こんな男のどこがいいんだよ」



黙って俯いていたゆきは男の言葉にキッと睨みつけて言った。


「あんたとは違って優しいしかっこいいし…第一、私たちは10年前からずっと愛し合ってんだから!」



10年前…??
何のことかはよくわからない。
でもそれは間違いなく大胆な告白で。


男は悔しそうに走り去り、バタンと扉が閉まる音だけが響いた。



「あはははは」

何だか笑えて思わず声を出して笑ってしまった。
彼女を見ると、彼女も小さく笑っていた。