「もう、遅いからかえるか」
そう言ってあたしたちは家に帰った。

家のドアを開けると、玄関にはまだお父さんの靴がなかった。

もう、10時半だよ?
「あら、おかえり。綾と健くんってもしかしてつき合ってるの?」

「ちがうよ!」
パジャマを着て笑いながらそう言うお母さんに、少しムキになってそう言った。

「お父さんまだ帰んないんだね」

「そうねぇ・・・こんなに遅いの初めてだよね・・・」

あたしとお母さんの間に微妙な空気が流れたので

「お母さんも、早く寝ないと!」
そう言って、階段を上がった。

あたしは、確かに見た。

「そうねぇ・・・」といいながらお母さんの顔が引きつっていたことを。

今までに見たことのない、複雑な顔だった。