おかずのコロッケを口に運ぶお母さんを見て、話そうか迷った。

けど、話したら確実に家族がばらばらになる。あたしでもそれくらいのことはわかった。

「ねぇ、おかあさん。お父さんってさぁ、今日残業だよね?」

「そうだけど。何かした?」

「ううん。何でもない」
このことは、あたしの中にとどめておこう。そう決めた。

この家族が壊れるのだけはいやだった。


その夜。あたしは健二とメールをやり取りしていた。

〈今度の休みどっか遊びにいかね?〉

〈同じクラスがよかったよなぁ〉

〈今度のサッカーの試合見に来いよ!〉