いかにも、お前うぜぇからどっか行ってくれない?と言っているかのような目を向けられる。
白目くらいいいじゃないか。
全く飛鳥はいちいち煩い。まるで小姑だ。ねちねち小言を言う。
「その性格直し…」
――た方がいい。
そう続きをかっこよく決めたかったけど、その言葉は消された。キーンコーン…と鳴り響くチャイムと共に。
「それはお互い様じゃない?」
「っ!」
「早南も性格直した方がいーよ」
チャイムに呆れていると耳元で囁くような声がして。学校急ぐよ、と言って先を行ってしまった。
…な、なに。
……聞こえてたのか。
吃驚した。南央のことでいじられたかと思ったら、こんな近くで声を出して。
「…っう、飛鳥のやろお…」
――不覚にも、赤く、熱く、顔が火照ってしまった。
学校はすぐそこ。
早く行かなくちゃ、遅刻なのに。
急がなくちゃ、遅刻なのに。
なぜだか私は、そこから一歩も動けなくなっていた。
―――――――――――
結局教室に入ったのは一限目の授業の途中からだった。
最悪なことに、生徒指導担当で数学教師の山岸先生の授業中で。
そうとは知らず堂々と教室に入った私は「後で生徒指導室に来なさい」という呼び出しを食らってしまった。
そして今は、説教中である。
「君の兄の南央君はあんなにも出来が良いというのに。妹がこれじゃこの学校はやっていけないって。ってか血縁者なのかよ本当」
「失礼じゃないすかそれ」
「それ程の違いがあるって事だ。そう思うのなら直してみやがれ」
大層な言葉遣いで私をぴしゃりと叩くのは、保健医の佐伯先生(27)独身女性。
ちなみにここは保健室である。生徒指導室へは行かずにすんだ。それはここにいる佐伯先生様のおかげであります。
「つーかお前ちゃんと私に感謝してんだろーな」
「ももも、もちろんですともっ」
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