ちょっと掠れた声で、櫂兄が耳元で言う。 櫂兄の黒い癖毛が頬にあたってくすぐったい。 「………涙は、嫌だった?」 嫌? 違うよ。 「嫌、…じゃない」 少しくらい、素直になっても大丈夫。 櫂兄だもん。 好きだもん。 すっと、櫂兄の体が離れた。 櫂兄の手が、頬に触れる。 体温が一気に上昇した気がした。 そしていつもより真剣な目の櫂兄の顔が近づいて。 ──・・・そっと優しく、キスをくれた。