────── なにかがふわっと髪に触れた。 目をゆっくり開けたとき、耳元にピッ、ピッ、と音がした。 前髪を軽く撫でているのは 「…目、覚めた?」 櫂兄。 大きな手がふわっと触れる。 「…………」 声を出そうとしても出なかった。 櫂兄と、話したいのに。 「…体調、どう?」 ──・・・大丈夫、 そう言いたいのに、口を動かすことしかできない。 それを見て、櫂兄は言った。 「無理しなくていい」 ふっと微笑んだ。