「…なんで家に居んだよ」

十座の目の前には,リビングでくつろぐ和良の姿があった。

「玄関で待ってたら,葉子さんが入れてくれた」
(※葉子=十座の母親)

呆れる十座。
さっさと朝食を平らげ,玄関を出た。

「あいつ…」


十座の視線の先には,昨日,グラウンドの外から野球部の練習を見ていた少年が歩いている。

「誰だかわかるか」

別に訊くほど気になっているわけでもないが,気が付けば,隣にいた和良に問うていた。

首を傾げながらも,和良は答えてくれた。


「黄征天寺。隣のクラスだけど?」

ふーんと言った後,十座は黙った。

教室につくまで,ずっと。