その,たった一球を見て,思わず生唾を飲み込んだ。見せつけられてしまった。 “力の差”と言うやつを。 でも,自分だって負けてはいない。 そう思っていた。 ふと,グラウンドの外に目をやった。 そこには,ひとりの少年がこちらを見て立っていた。 十座と目が合うと,少年は走ってどこかへ行ってしまった。 「なんだよ,あいつ」 視線を戻し,ランニングに集中した。