「……それより。お前、今日このクラスに転校生来ること知ってるか?」
と、花田くんは無理矢理話の根本を捩曲げてきた。――少し虐め過ぎただろうか。
だって面白いじゃん。
「転校生? へぇ、今の時期に? 珍しい」
もうすぐ受験だってのに、難儀な話だ。
――俺には、これっぽっちも関係ないが。
「ああ。何でも、自分から転校したがってたらしい。それに……」
「それに?」
「大層な美人だっていう話だ」
「ほー、それは楽しみだな」
俺、は爪の先ほども抑揚を交えずに言った。
「随分棒読みだな。興味ないのか?」
俺は、大仰に肩を竦めて見せた。
「何を言うんだ、花田くん。仮にもボクは思春期の男の子だぜ? 興味ない訳が無かろう。ああ。このクラスも今日からは天国だ」
まあ、嘘なんだが。