そろそろ出ないと間に合わなくなるよと片瀬くんを急かして、制服に着替えさせて玄関に追いやった。

名残惜しそうにあたしを見る片瀬くんに負けないように、あたしは極上の笑顔を作り上げた。


「……先生」

「どうしたの?早く行かないと遅刻しちゃうよ」


片瀬くんは、逃げることを許さないとでも言うような、ひどくまじめな顔をしていた。


「いつか分からないけど、俺が高校卒業して、本当に先生が先生じゃなくなっても、俺は隣にいたいです。
だからそのときは、俺のこと名前で呼んでくれる?」