窓を開ければ、まだ朝早いこの時間なら十分に涼しい風が吹き込んでくる。

ほんのりと温いバケッドを切って、紅茶を入れて昨日と同じ丸テーブルを2人で囲んだ。

柔らかくて、どこか暖かいこの朝の風景がまるで奇跡みたいにあたしには思える。


「……片瀬くん」

「なに?」

「あたしね、今日で学校辞める。片瀬くんやみんなには迷惑かけちゃうな。
卒業まで、進路が決まるまで見てあげられたら良かったんだけど」


片瀬くんは手に持っていたマグカップを置いて、少しだけ微笑んだ。


「……今までお世話になりました、先生」