でもと言い募ろうとする片瀬くんを遮って、あたしは言葉を探した。
そうだねぇと場違いなほどのんびりと口火を切る。


「あたしはね、片瀬くん。幸せになりたくなんてなかったの。だってそれがすごく怖かったから」

「……ミナトさんのことが、あったからでしょ」

「うん、そう。
でもねあたしは臆病だから、自殺する勇気もなかったし、ひとりでどんどん堕ちていくのもすごく怖かったの。
でも、幸せになるのも怖くて、あたしはいつだって、ぎりぎりでふらふらしてた」


片瀬くんは戸惑った、幼い表情を垣間見せ。生きてくれていて良かった。とひっそりと呟く。
あたしはふふと笑って、もてあそぶように写真たてをつついた。