「……あたしはね、片瀬くん。
片瀬くんがそう言ってくれたときもそれはもちろん本音でもあるとは思ったけど、若さの暴走もあると、そう思ったよ」
「……」
「でも、嬉しかったのも、事実だよ」
「ねぇ、先生。俺の隣にずっと、いてはくれないの?」
今にも泣き出しそうな片瀬くんの曇りない瞳は、あたしを無意識に頷かせようとする。
けれど、それはひどく危険だ。
だって、それは片瀬くんにとっての暗い未来へのいざないに直結しているんだから。
「居れたらなと思ったときも、確かにあったよ。
でも、あたしはこんなで片瀬くんをきっと不幸にするなと思ったの。だから嫌だな」