それでもあたしは伝えられたらいい言葉を知らなかった。

安心して欲しい。罪悪感を持って欲しくはない。
だから、謝るしかできなかった。


「ごめんね、片瀬くん」


声を押し殺して泣く片瀬くんをあたしはただ抱きしめた。

窓を叩く雨音は、もはや騒音のようになりつつあって。
これが、片瀬くんを引き止められる理由になったら良いのにと、あたしは思った。