「とにかく。俺は北側の方を探すから、米倉も探して欲しいんだ。頼む!」 「ま、いいんだけど。……あとでしっかり、事情は聞かせてもらうからな」 電話を切ると同時に俺は、走り出した。 どこにいるかなんてわからないけれど、歩いているのが落ち着かなかった。 この人ごみの中、たった一人の人を見つけられる可能性は、果たしてどのくらいなのだろうと。俺は思った。 けれど。 それでも。 とーこちゃんを、俺は誰かに渡したくないんだ。