「痛いっ…雪奈?!何で叩くのー?」



額に置いていた腕を振り上げて、相手の手首を勢いよく掴んだ。



雪奈、寝込みのあたしがか弱いとか思ってるんでしょー……って…ええ?



「何が"雪奈"だよ?」



「…へ?」



目を開けると目の前には雪奈ではない顔が映った。



え…雪奈じゃないの?!しかも男?!



驚いて思考回路がピタリと止まった。



その男は不機嫌そうにあたしを強く睨んだ。



「手」



「えっ、はっ?手?」



意味が分からず不思議気に拍子抜けの声を出すと、あたしが見えるように掴んでいる手首を見せた。



自分のしている事に気づいてパッと手を離すと、警戒気味の表情で寝転ぶあたしを見てくる。



何…この人。しかもあたしと雪奈以外にも屋上に入ってくるなんて…



黙って身体を起こして後ずさりをすると、男は呆れた顔でハァとため息を零した。



「俺が警戒するっつーの。何?屋上に生徒が入って良いとでも思ってんの?」



説教口な口調だから、少しムカッと怒りが上がった。