「俺と綾が付き合えばお前は満

足なのかよ?」

「そんなわけねぇだろ!」

「だったらなんだっつんだよッ

!!」

ぐっと手に力を込める。

「お前おかしいんじゃねぇの?

自分の彼女と付き合えってすす

めんのかよ?」

「・・・・・陽介!」

ガッと頬に強い痛みが走った。

そして熱湯でもかけられている

ような感覚。

陽介は塀に背を強か打ちつけた。

「・・・・・ッ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

かすかによみがえる声。

頭の中で囁く女の声に、吐き気

を覚えた。


ああ、なんて気味の悪い生き物

なんだ。


「・・・・・・・悪い・・・・」

居心地悪そうに誤る浩次を、も

う見ることもできない。

陽介は膝を折り、そのままずる

ずると腰を下ろした。

「・・・・・・・・・・・・陽介。俺はそん

なつもりじゃなかった。でも・・

・・お前が俺たちを避けてるみた

いだったから・・・・・このままじゃ

嫌なんだ。俺たちが付き合うこ


とでお前と離れるのは、嫌なん

だ」

「・・・・・・・・るせぇよ」

俺の気持ちなんて知らないくせ

にぐだぐだ言ってんじゃねぇよ。

何にも言わねぇくせに、一人で

悩んでんじゃねぇよ。

「・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

最後にもう一言そういうと、

浩次はきびすを返してしまった。

ああ、その背にかける言葉があ

るのなら・・・・いや、声をかける

勇気があったのなら、もう少し

今の状況を変えられたのかもし

れない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

陽介は殴られた頬に手を当て

た。


今は、それすら愛しい。

まるで狂気でつくりあげられた

行動のようだ。