「…これからどこ行くの?」


「…家に決まってんだろ」


「家?どこの家?」


「隣り町にマンションを買った」


「マンション?!買ったって……そんな軽々しく」


「嫌だったか?」


「そういう訳じゃないけど……凄くびっくりして…」


「何年あの屋敷で働いてたと思ってる。マンションぐらい買えるよ」


「…………龍也さん……ありがとう」


ハンドルを握っていない右手に
柔らかい感触が触れて
ふと横へと視線を向けると
結衣が右手を握り締めていた。