有栖川が、屈託のない笑みで私を見ていた

な…何よ!

なんでそんな顔で私を見下ろしているのよ

「僕のお嫁さんになってくれます?」

「は?」

「僕の妻になったら、あの家をプレゼントできるでしょ?」

「……いらないから」

「え? どうしてですか?」

あんな広いだけの家に…未練なんかないわ

寂しいだけだもの

それに竜ちゃんの家が隣にあるのよ

見たくない現実も、目にしなくちゃでしょ

「冴子にあげれば?
喜ぶよ」

「え? どうしてですか?」

「だから喜ぶって言ってるでしょ」

「どうして僕が、飯塚さんを喜ばせないといけないのでしょうか?」

有栖川が不思議そうな顔をして、首をかしげた