先生がそれだけを言って再び教室のドアの方へ足を進める。

でもあたしにはこの人に
言わなくちゃいけない事がある。


「先生、あの。少しいいですか?」


シーンと静かな教室に

あたしの声がよく響く。


と、同時にクラスメイトが一斉にあたしを見た。


「それは今ではないといけないのか?」


くるりと反対を向いてあたしを見るその瞳は
見つめるというよりも睨みつけるという言葉が
ふさわしいくらい。


よくこんなんで教師が務まるなって思うくらいの鋭い目。


だけど今は怖いとは言ってられない。


「はい、今です」


チャイムが鳴るまでにはまだ少しの時間があるはず。


「分かった、来い」


先生のその一言で


「青山マジかよ~」
「よくこんな奴のところにいくよなぁ」


クラスからはそんな声がチラホラ聞こえてくる。


別にあたしは怖くないし。

「おい、本当にいくのかよ?」

本当にどいつもこいつも・・


「ばーか」


心配そうな顔をしてあたしを見る菊池に
そう言い捨てて教室を出た。