「何か・・悩んでますか?」
校庭に立つ木々が風に揺られている所を見ていると
理事長が話かけてきた。
「いえ、特に」
本当は違う。
初めて生まれたこの気持ちに
俺はどうしたらいいのか分からなくなっていた。
「嘘。本当は凄く悩んでる顔してますよ」
二コリと優しい笑顔で微笑む理事長に
「・・・」
何も言えなくない俺がいる。
生徒が帰った後の学校は静寂さが漂っていた。
そんな中に響く理事長の言葉一つ一つが俺の胸に
深く入っていく。
「今までにない気持ちに、戸惑っている?」
この人はエスパーか?
「ふふ。あなた達を見てればすぐに分かります」
歳をとるということはそれだけ観察力も優れてくる
ということなんだろうか。
「花ちゃんは本当にいい子ですものね」
「しかし、俺は」
青山は生徒だ。
親から預かっている生徒に好意を持つなんて
「今は無理かもしれないけれど。それはずっとじゃないのよ?」
「理事長」
「きっとお互いの気持ちが届く日が来るはずです」
窓に視線を移し、何処か遠くを見つめる理事長。
歳のわりに綺麗な老け方をしている、
そう感じさせるくらい若若しく、落ち着きも見せる。