パパの横には涙をいっぱいにためて
あたしの名前を呼ぶママ。

せっかくこの日の為に新しく買ったばかりの
ブランドもののハンカチが
もうびしょびしょに濡れている。


っとに

どっちが子供でどっちが親よ?


「ママ、一生の別れじゃないんだから泣かないの!」


泣き虫で

それでいてバカが付くくらい素直なママの姿を見て
ついあたしまで泣きそうになる。


きっとママのこういうところにパパは惚れたんだろうなって

納得できる。


こんなママだけど。

あたしにとっては大事なママ。

世界一のママだ。


「そろそろ時間だ。」
「ごめんね、空港まで行けなくて」
「構わない。ちゃんと学校に行けよ」
「任せて」

パパが泣きじゃくるママの肩を抱いてもう片方の手で
あたしの頭を撫でる。

昔からこの手が大好きだった。

この手にいつもあたしは守られてきた。


パパの大きな手はいつだってあたしを安心させてくれる。


「黒崎先生のことも」
「パパ、あたし、やっぱり」
「花、頼んだぞ」

そんな事を言われても。

「じゃあな」
「花ちゃん、行ってくるね」



やがてタクシーに乗り込んだ二人は

笑顔でそう言うと

空港へと向かって行ってしまった。


あたしに少しの寂しさを残して・・