だが、彼が帰ってくる気配はまるでなく、
気付けば俺達はデカイ声で雑談を楽しんでいた。

「ねぇ、ずっと気になってたんだけどさ、
時差とかってないの?」

「『時差』?」

「うん。

勉強あんまできないあたしが言うのは変かもしれないけど、
かなり気になる。

ほら、日本が昼間ならどっかの国は夜~みたいな。」

「んなことわかってるよ。

だからそれが?」

「さっきからいろいろ国移動してるけどさ、
ずっと昼間じゃん。

ちょい午後に入ったくらいの。

アメリカと中国と日本の時差って、
一時間もないわけ?」

「あぁ、なるほどな。

ないわけないよな……。

いやぁ、なんでだろ。

俺にもわかんないわ。」

やっぱ、安藤は頭がいいんだ。

勉強さえすりゃ、
天才になれるタイプだな。

「『わかんない』って……
本気で言ってるんですか?」

テリーは呆れたように言った。

「え? 知らなきゃマズイ?」

「真奈は知らなくて当然だと思いますけど、
和人は知らなきゃヤバイですね。」

……兄弟って設定なのに敬語使うなんて、
バカか、こいつは。

ま、いいか。

「解説お願いします!」

俺は手をパチンと鳴らした。

「ライフプラネットケータイで場所移動する際、
時間は微調節されるんです。

ライフプラネットから地球に行く時、
『あの辺に住むなら今は昼だから……』とか考えるのめんどくさいですよね?

ですから、そういうのを防ぐためにうまくできてるんです。

これ、昼夜のある星を希望するライフプラネット人が知らなければならないことベストスリーに入りますよ。」

「マジ……?

俺、ライフプラネットの常識も地球の常識もまるでわかってないんだな。」

「少しは恥じてください。」

「はいはい。」

……みたいな。

意味ありそうでなさそうな雑談を死ぬほどやっていると……