“Who are you?(君達は誰だね?)”

突然、見たことのないおじさんに声をかけられた。


あぁ、めんどくさい。

そうだ、俺が日本語をしゃべれるようになったって意味無かったんだ。

ここはアメリカなんだから。


どうしたらいい?

俺は中学校の英語すらチンプンカンプン。

きっと、安藤だって……。

「ウィーアージャパニーズ。(私達は日本人です。)

ソーリー。(ごめんなさい。)

ウィーロストアウェイ。(道に迷ってしまいました。)

クッジュウテルミーザウェイトゥザステイション?(駅までの行き方を教えてくださいませんか?)」

なんだ。

安藤、英語話せるのか。

“Japanese.....”

おじさんは一瞬静止した。

「ソレハクルシイイイワケダネ。

アンシンシテ。

ボク、ニホンゴノセンセイダカラ。」

ほぅ……。

世の中はうまく作られてるもんだ。


俺はホッとした。

「すみません。

わけのわからないことを言ってしまって。

英語の知識が少ないものでしてつい……。」

日本語のアドリブなら俺におまかせだ。

安藤なんかに負けやしない。

「キニシナイデ。

キミモ……ニホンカラ……」

俺はさっきみたいに自分の手をチラリと見た。

「はい。

生まれはアメリカですが育ちは日本です。」

よし。

悪くない嘘だ。