聖子さんは、大人で・・・

たくさんの恋をしてきた。


子供も産んで、結婚もして・・・

たくさんの困難を乗り越えた大人。



だけど、同じなんだ。

恋をすると少女になるんだ。



「弘人の部屋、模様替えするんだって…それ聞いて泣いちゃった。」


私、思わず・・・

聖子さんの細い体を抱きしめちゃった。



私もきっと同じこと思う。

隆介に新しい彼女ができて、あの部屋が変わったら・・・


寂しいよ。

思い出が消えちゃうようで・・・すごく辛いよ。



「ベッドの方向とか、ソファの位置変わってたら、どうしよう…」


聖子さんがとてもかわいいと思った。


そして、彼との思い出がとても素晴らしいものだったんだ・・・ってわかる。



キラキラした宝物のような日々を、聖子さんは毎日思い出しながら生きてるんだ・・・



「模様替えしないでって素直に言えたら良いんだけどね。」


聖子さんは、髪を触りながら遠い目をした。




弘人はどんな気持ちで模様替えするんだろう。


男の人ってこういう女心なんてわかんないんだろうな。


きっと、特に深い意味もなくただ、模様替えしたくなったんだと思う。



でも、聖子さんにとっては泣いてしまうくらい物凄い出来事なんだよ。



弘人に伝えてあげたかった。


会った事もない弘人に、聖子さんの切ない恋心を話してあげたかった。


きっと・・・弘人も泣くよ。



そんなに大きな深い愛を知ったら・・・

泣いちゃうよ。




きっとすごく嬉しいと思う。


自分との思い出を大事に大事にしてる人がいるってこと。



弘人の存在が、どれほど聖子さんを強くしてるか・・・

きっと、知らない。



いつか、ちゃんと伝えて欲しい。



そして、また聖子さんを抱きしめてあげて…



頑張ってるこの細い体。


2人の子供を必死で育ててる聖子さんを、弘人の胸で休ませてあげて…