「そういえば、隆介…よくバイト許したなぁ!美亜ちゃんの。」

たっくんは、嘘がつけない性格だってわかる。

少し不自然な笑みを浮かべながら、私と隆介を近づけようとしてくれる。


「あそこの牧場、女癖悪い男が多いって噂だぞ!知らねぇのか?」

ゆかりも私もたっくんのわざとらしい嘘に吹き出しそうになる。


でも、隆介ってば鈍感で、案外純粋なとこあるんだよね。


「はぁ?マジで?俺、聞いてないし!しかも、美亜俺に相談もしないで勝手に決めたし!」


予想外の反応に泣いちゃうくらい感激した。

隆介が私を心配してくれてるのが伝わってきて、すごく嬉しい。



運ばれてきたふぐの照り焼きに手もつけずに、お茶ばかり飲む隆介。



「って言うかさ、お前バイト辞めれば?」

隆介は、口を尖らせて…怖い目をして私を睨む。

その顔も、すごくかっこよくて…好きだなぁなんて考えてしまう。


なのに、口から出た言葉は…


「隆介に関係ないじゃん!」



本当はそんなことが言いたかったわけじゃない。

心配してくれて、辞めろとまで言ってくれたあんたが愛しいよ。


本当は涙出ちゃうくらいに嬉しいんだよ…



「じゃあ、勝手に変な男に遊ばれて捨てられればいいだろ!」


隆介のバカ。

美亜のバカ。



素直になれない私と隆介。


きっと、たっくんとゆかりならこんな会話にならないね。



どうしてだろ。


素直になるって難しい。


隆介ごめん…



私は、サラダに入ってたプチトマトをそっと隆介のお皿に移動させた。