この調子じゃ、またキスされてからかって遊ばれるのかも知れない。
だけど、やっぱりこの背中が好き。
隆介の背中に抱きつきながら、風を感じるこの瞬間が一番好き。
背中にそっと囁く。
『彼女にして…』
私の願いは、風に乗り・・・お父さんのいる空へ消えてった。
ねぇ・・・お父さんがもし生きてたら、何て言うかな?
そんな優柔不断な男はやめとけって言う?
お前は遊ばれてるんだって怒るかな?
お父さんはどんなお父さんになっていたんだろうね。
まだ私が小さすぎて、女の子を持つ父親としてのお父さんを想像できない。
理解あるお父さんだったのかな。
それとも、結構門限とか作っちゃって、彼氏なんか連れてくるなとか言うタイプなのかな?
お父さん、聞こえる?
私は、きっとお父さんなら隆介を気に入ってくれると思うんだ。
お父さんは小さい頃から私の憧れで、誰にでも親切だった。
小さかったけど覚えてる。
お父さんに教えられたこと。
人を外見で判断してはいけない。
職業や学歴で判断してはいけない。
人は中身が大事だって。
だから、優しい心の持ち主になれよって。
お父さんがゴミの収集車のおじさんに挨拶をしてる姿を見た。
私と弟が『臭い』って言ったとき、お父さんは真剣に私達に話してくれた。
この人達がいなければ、ゴミは誰が片付けてくれるんだ?
みんなが嫌がる仕事をしてくれてる人に対して失礼だって。
それ以来私は絶対に臭いと思っても、口には出さなかった。
短い時間だったけど、たくさんのことを教えてくれたお父さん。
ねぇ、お父さんは人の心の中をちゃんと見ろって言ってたよね。
お父さんには見える?
隆介の心の中。
どうなってる?
私の居場所はある?
ねぇ、お父さんの目から見た隆介はどんな男?