『バス降りろ!』


その声は、携帯電話からの声と少し違う声。


…だけど、すぐに誰だかわかる。


隆介…



どうして…?


どうして??



訳わからないまま私はバスから降りる。


どうしてなんだろう。

隆介の命令は私はほぼ100%文句も言わずちゃんと聞くことができる。




それが『好き』の力?



降りた私の目に飛び込んで来たのは、大好きな隆介のバイク。


門の横にある公衆電話から、隆介が思い切り偉そうにこっちに歩いてくるのが見えた。

ドキドキが止まらない。



だって、キスしてから・・・初めて会うんだよ・・・



「よぉ!ペット!飼い主に無断でバイトしていいと思ってんの?」


本気で怒ってるのかと思うくらい低い怖い声でそう言うと、隆介は突然笑い出す。


「嘘だよ・・・くくくく… 今、本気でビビってたろ?あ~おもしれぇ」


隆介は、黒の革ジャンにGパン姿で、まるで昔の映画俳優のようだった。


今日は髪をヘアバンドで止めていて、それもまた私をドキドキさせる。



「あの・・・隆介、どうしてここが・・・」


目が合わせられなかった。

明らかにキスのことを意識してる私を隆介はきっと気付いてる。


「卓弥から聞いた。ゆかりちゃん情報だけど・・・ってゆうかよぉ!お前、昨日会ったのになんで言わねぇの?しかもなんで牧場?」


隆介はバイクに腰かけて、私のトキメキポイントでもある『タバコに火をつける仕草』をじっくりと私に見せてくれる。

火をつけて最初に吸う瞬間の顔が好き。

目を細めて、眩しくもないのに眩しい顔をするんだ。