それから1時間くらいお客さんは一人も来なくて、ずっと恋愛の話をしてたんだ。
左手に指輪がなかったので、もしかして・・・と思っていたんだけど聖子さんは今はシングルマザーとして、仕事と子育てに頑張っている。
「美亜ちゃんの彼氏、写真ないの?」
…彼氏??
そんな…彼氏なんて・・・
「彼氏じゃないです…好きって言われてないし・・・ペットなんです。」
私は自分のほっぺを何度もつねりながら下を向く。
「話聞いてると、彼氏だよ。照れてるだけだと思うよ。いつでも俺に会えるって言ったんでしょ?かなり不思議君だけど、それは告白だと思うよ!」
ゆかりや、美菜に言われるよりも説得力があるのは聖子さんが大人だからなのか、恋愛経験のせいなのかわからないけど・・・
胸の中のモヤモヤした塊が、小さくなる感覚。
「でも、やっぱり言葉って必要だよね。それで、もし彼女じゃないって言われると辛いよ。美亜ちゃんから、告白しちゃえば?絶対OKだよ!」
「え~~!!告白ですか?怖くてできないです。隆介って、優しかったかと思えばすぐにいじわるになって、わけわかんないんです。だから・・・不安です。」
聖子さんは私の話を聞きながら、何度か目頭を押さえた。
そういう癖なのかと思っていたら、聖子さんは涙をこらえていた。
「すっごい・・・わかる。私も同じような恋してるから・・・」
無理して笑顔でそう言った聖子さんの瞳は夕日を浴びてキラキラと眩しいくらいに輝いていた。