私はいつもの社交性もどこへやら…
借りてきた猫のように、隆介の隣でペコペコと頭を下げた。
「俺の高校時代の友達、健太と鈴子。こっちは、俺の…ん~…俺のペット・・って言えばいいかな。美亜…」
普通なら怒る場面かも知れないんだけど、私はペットと言われて喜んでた。
初めて話す鈴子は、健太と話す時は甘い声で、私や隆介と話す時は…しっかりしたお姉さんって感じだった。
前に会った時よりも、髪が伸びて色っぽかった。
隆介は、この人と電話してたんだぁ…
「初めまして。美亜って言います。ペットです。」
私がそう言うと、健太が大笑いして鈴子の肩を叩く。
簡単な挨拶だけして、また今度ねって別れた。
この『今度ね』は、明らかに社交辞令。
べったりと手を繋ぎながら歩き出す健太と鈴子を、隆介が見つめてる。
その隆介の目が…なんとなく寂しげで私の不安は大きくなる。
…くしゅん…!!
「寒かっただろ?コレ着ろ!」
隆介…
さっきまでの不安なんて消えちゃうよ。
隆介が、バイクのメット入れから取り出したダウンジャケットを私に渡す。
乱暴に
びっきらぼうに…渡す隆介が…
大好きだって… 体中が叫んでる。
「送るから、乗れば?」
いつからだろう。
メットを2つ用意してくれるようになったのは…
自然に隆介の背中に手を回せるようになった私は、いつものように頬を背中にくっつける。
信号で止まった時だった。
「お前、ストーカー?」
そう言って、私の腕ぎゅっと掴んだ。
そして、
「しっかり掴まれって!」
そう言うんだ。
背中に涙が染み込んでしまうんじゃないかって思うくらいにポロポロと涙がこぼれた。