思い立ったら行動の早い私は、その日のうちにカラオケのバイトを辞めた。
バイトの人数もハンパじゃなく多かったから、誰も私を引き止めなかった。
そのカラオケから10分くらい歩いた所に隆介のバイトしてる居酒屋がある。
場所は知ってるけど、行く勇気はない。
だけど… 行ってみようかな。
10時にバイト終わるって行ってたし…
待っててみようかな。
…ウゼーって言われることは覚悟してる。
でも、ほんの少しの希望。
『おう!待ってたの?』なんて優しく私に微笑んでくれたりして。
繁華街にある居酒屋は大賑わい。
『居酒屋 さいばー』
その大きな看板の横に停めてあるバイク。
あと、10分で隆介のバイトが終わる。
もうそろそろコートの季節かな…
夜はマジで寒すぎる。
その時、どこかで見たことがある男の子が私の前に現れた。
端整な顔立ちで、筋肉質な体。
その男の子は、私の隣に座り…携帯でメールを打ち始めた。
誰だっけ?
私は立ったまま、しゃがんだその男の子のメールを盗み見た。
『今、着いた。健太』
あ!!
記憶が一気に蘇る。
あのデパートの時計売り場で会った『鈴子と健太』
…健太だぁ。
と、いうことはこの中に鈴子もいる。
健太、やっぱりかっこいいなぁ…
面食いで有名な私とゆかりが揃って、満点を付けるくらいなんだから。
野球部のエースと聞いたせいで、よりかっこよく見える。
でも…隆介のライバルだったんだよね。
エースを奪い合ったライバル…
くぅ…
かっこよさでは、隆介の方が勝ってるもん…
まぁ、好きだからなんだけど。