満員の電車の中で小声で話す。
「ねぇ、美亜って呼んでもいい?」
「うん!美菜って呼んでもいい?」
手でお互いを支えながら、コソコソ話。
「美亜、バイトする気ない?」
美菜は、目をキラキラと輝かせながら私の目をじっと見た。
…バイトかぁ。
今は、カラオケBOXで週に3日バイトしてる。
特に楽しいわけでもなく、そこで良い友達ができたわけでもなく…
そろそろ、辞め時かな、なんて考えてた。
「どんなバイト??」
私が興味を示すと美菜はさっきよりも目をキラキラと輝かせる。
「…帰り、会える?ゆっくり話したい!」
この満員電車の中では話せない内容なのか…って少しだけ不安になった。
学校で、ゆかりにその話をするとゆかりも同じ事を考えた。
「風俗系だったらどうすんの?絶対やだからね!!」
ゆかりがちょっぴり不機嫌になってくれたことが嬉しかった。
ゆかりはやきもち焼きで、親友の直にいつもやきもち焼いちゃってるんだ。
だけど、そんなゆかりを見て私がやきもち焼いちゃったりしてた。
まだ、ゆかりの親友になれていないのかな…って。
だけど、今プ~っとほっぺを膨らますゆかりを見て…
なんだか嬉しかった。
秋と冬の真ん中の切ない風を感じながら、中庭でホットミルクティーを飲む。
「怪しいバイトだったら、絶対断るから!!」
私がそう言っても、ゆかりは目を合わせずにスネたフリしてた。
かわいい…
「美菜と美亜って…なんか、コンビみたいで…羨ましい。」
私はそんなゆかりを抱きしめて頭撫でながら言う。
「ゆかり、かわいい~!」
どんよりしていた空はいつの間にか、雲ひとつない青空に変わっていた。