ちょっとわざとらしく動いてみる。


周りのオヤジ、絶対気付いてるよ。


・・・どうして助けてくれないの?

困った私の顔、見えてるくせに・・・・・・



汚い大人達。



あ・・・でも、ゆかりの親友の直の彼氏である『先生』だけは理想の大人。

先生が今、ここにいれば、間違いなく助けてくれる…



私は、助けてくれそうな男の人を探す。

このチカン、このまま逃がす訳には行かない。


キョロキョロ


みんな見て見ぬフリ。



その時、斜めにいるさっき携帯の鳴った女の子と目が合った。


私は、口だけ動かして『チ・カ・ン』って伝えようとした。


さすが、女の子は勘が良い。


その子は、首を少し縦に振りニヤリと笑った。


キキィィィィーーーー!


また急ブレーキ。


その隙に、目で合図した女の子が私の背後に来た。


顔しか見えなかったから女子高生だと思ってた。

でも、制服を着ていない所を見ると、私と同じくらいの年齢かな。


次の駅が近付いても、そのチカンは私のお尻を触り続けた。

さっきの急ブレーキで、スカートの中に手を入れることは止めたようだった。


あ・・・


またスカートの中に・・・



その瞬間だった。




―――バシャ!!



写メの音!


そして、すぐに大声でその女の子が叫ぶ。


「痴漢で~~~す!!」



そう言うと、次にそのチカンの顔を写真に撮った。


オドオドとするそのチカンの顔を見て、吐き気がした。


こんな男に、触られた自分が気持ち悪くて仕方がない。



すぐに駅に着き、少し離れた場所にいた女子高生2人組も騒ぎ出し、その男の腕を掴むことに成功した。


私と、女子高生2人と、写メを撮ってくれた女の子と、座っていたおじさんが2人。


そのチカンの腕を掴み、駅員さんの所まで連れて行った。



ゾクゾク・・・



なんだかわくわくしてた。



悪い奴をやっつけるヒーローみたいな気分になった。