「俺、美亜が思ってるような強い男じゃない。きっと、本当の俺を知れば情けない男だと思うよ…」



隆介が自分の事をこんな風に真剣に話してくれることは初めてだった。


私達は、週に3回は会っていて…いろんな話をしていたけど、こんなに中身のある会話はなかったんだ。


TVを見ながら笑ったり、ゆかりとたっくんの話をしたり…

りゅーたんとみーたんと遊んだり。


一緒にいる時間の割には、お互いのことを理解できていなかった。



それは、隆介が壁を作っているからだって思ってたけど…

私自身も、踏み込むことが怖くて臆病になっていたんだと気付いた。



本当の隆介が…知りたい。


ずっとそう思ってた。


だけど、怖くて…


何気ない話で笑い合えることが嬉しくて…

前に進めなかった。




隆介がタバコの火を消した。

あぐらをかいて、私を見つめる。



「ここから先はお前次第だ。聞く?聞かない?」


大事な話をはぐらかしてばかりいた隆介とは思えない。

真っ直ぐな目で私を見つめる。


「聞く…私、隆介のこと、もっと知りたい。」


どうして涙が出るのかわからなかった。

私の涙を見て、隆介はティッシュの箱を渡してくれた。



「ばか…何泣いてんだよ。」


それが隆介の優しさ。



隆介は、壁際のソファに座り、私を隣に座らせた。

一人分くらいの間を空けて、私はソファに腰掛けた。

このソファに座るのは初めてで、ドキドキした。


隆介が少し動くだけでソファからその振動が伝わってきて、すごくキュンってしちゃうんだ。


なんとなく…「彼女専用」だ・・・って思ってた。


だから、1度も自分から座らなかった。

隆介もいつも、TVを見るときは床に寝転んでいた。



初めて2人で座ったソファは、柔らかくて気持ちの良い感触で…


急に、隆介との距離が縮んだような気がした。