「隆介は、いつも冷静だもんね…」


私は、寝転んだ隆介の背中を見ながら言った。


隆介はゆっくりと体を起こす。


「だから、お前には俺の気持ちわかんねーんだよ!」


え?


ちょっと怒ってる?



怒らせる様な事言ってないのに…




しばらくの沈黙の間、冷蔵庫のブイーンって音がせめてもの救いだった。



重いよ…空気。



「俺が…いつも冷静だと思うか?」


今日の隆介は今まで見たことない表情をしていた。


初めて、隆介の心の扉を少し開いた気がした。


…これも、トマトの魔法?



「さっきの俺が冷静だったか?」


隆介はそう言うと、タバコに火を付けてまた寝転んだ。



…さっきの俺?



さっき、私を追いかけてきてくれた隆介?



確かに隆介らしくなかった。

几帳面なあんたが、鍵もかけずに電気も消さずに私を追いかけてくれた。


そして、抱きしめてくれるなんて…




私の為に、冷静さを見失ってくれたの?



「隆介… どうして追いかけてきてくれたの?」


私は隆介の背中に話しかける。

背中になら、どんなかわいい顔でもできる。


溢れる涙をこらえながら、うるうるした瞳で背中を見つめる。



「お前が…どっか行くと思ったから。俺の前から消えると思った。」


これって…



このまま告白とか…??



一人で舞い上がる私は、何も言えず涙を拭う。


ハイツの上の階の人が乱暴に歩く音が響く。