いつの間にか、バイトの終わる時間をかなり過ぎていた。
私と聖子さんは大きなツリーの下で黙ったまま座っていた。
時々、聖子さんが私を見たから、私も聖子さんを見て…微笑み合った。
ブーーン!!!
低いバイクの音。
聞きなれた音がして、その方向を見た。
真っ黒なバイク。
ツリーの灯りが反射する黒光りしたバイクが…
「何度も電話したのに…おせーから迎えに来た。」
髪をかきあげて、首を左右に揺らしながら歩いてくる。
ツリーのせいで見えなかった聖子さんの存在に気付き、隆介はペコリと頭を下げた。
「いつもお世話になってます。すいません…いつも迷惑かけてないっすか?」
隆介は、緊張した笑顔でそう言った。
私と2人きりの時には絶対見せない顔。
気を遣ったり、緊張したときだけ見ることができるかわいい顔…
聖子さんは、そんな隆介に…こちらこそって頭を下げた。
そして、3人でツリーを見上げた。
夜が更けるとともに、ライトの青がどんどん濃くなるような気がする。
「綺麗だなぁ…」
「うん…」