その時、時間が止まったかと思ったんだ。
周りの音が全部『音量OFF』になっちゃったかのように
聖子さんの声しか聞こえなかった。
スローモーションのように
聖子さんの笑顔がゆっくりと涙色に染まってゆく。
泣きながら微笑む顔を見ていると、涙が出た。
やったね、弘人。
あんたイイ男だよ。
私の声、ちゃんと届いてたんだね。
いいよ、弘人。
いいよ、弘人と聖子さん。
すごく素敵な2人。
好きだと言ってもらえた聖子さんの涙を見ていて、思ったんだ。
私や
ゆかりや、直や、美菜や、鈴子…
同年代の私の友達と同じなんだって。
大人だからって
何も変わらない。
いくら経験が私たちよりも多くても、その恋はその人にとって初恋なんだ…
慣れることもなければ、
感情が薄れることもない。
恋をすると
少女になるんだね…
私は、自分よりもお姉さんな聖子さんを抱き締めて、頭を撫でた。
本当に良かった。
大好きな弘人をいつも想ってた聖子さん。
もう一人で頑張んなくていいんだよ…
休める場所ができたんだよ。
弘人にもたれかかっていいんだよ。