不思議な事が起こった。


トマトを飲み込んだら、なんだか少しかわいい私になれたんだ。



「隆介トマト、ありがとね!」


こんなかわいいセリフを笑顔で言えた。



照れてるのか、聞いてないのか隆介は残りのお弁当を一気に食べてる。



ガラガラ…


冷蔵庫の氷が出来上がる音にビクっとした私に、隆介が笑うんだ。



「もしかして、びびったの?お前、何回ここ来てんだよ!」


口にご飯をいっぱい頬張りながら笑う顔がすごくかわいくて、ずっと見ていたいと思った。


「隆介、鈴子って健太の彼女なのにどうして電話してくるの?」


トマトの魔法…



スラスラと言いたい事が言えた。



「友達だからじゃない?特に用事あって電話してるわけじゃないし。」


隆介もさっきまでの不機嫌な顔じゃなく、穏やかに話す。


「隆介が健太の立場だったら、イヤじゃない?ヤキモチ焼いたりしないの?」


私は食べ終わったお弁当の蓋をしてビニールにゴミを入れながら聞いた。

チラっと隆介の機嫌を伺いながら…



「あいつらは、そんなことでどうこう思うような仲じゃない。会えば、わかると思うけど… 俺と電話してたからってヤキモチ焼いたりする関係じゃない。」


会ったことあるよ…って言おうと思ったけど、また会いたかったから言わないでおこう。


「会ってみたい。鈴子の疑惑も晴れるし… 隆介ってヤキモチ焼いたこととかないの?」


私は、隆介にお茶を注ぐ。

隆介はありがとうの代わりに、右手を軽く上げる。


「俺が焼くと思う?」


隆介にしては、珍しい切り返し。

いつもなら、『焼かね~よ』って言いそうなのに。