クリスマスの牧場は、ものすごく暇なんだと、聖子さんから聞いた。
りゅーたんが死んでしまってから、しばらくバイトを休んでいた。
久しぶりの牧場は、すっかりクリスマスらしくいろんな演出がされていた。
…にも関わらず、お客さんの数は日に日に減っているらしい。
確かに…
クリスマスのデートで牧場を選ぶ男って…いないよね。
今年初めてだという、大きなツリーが私を出迎える。
入り口を入るとすぐに目に飛び込んでくるそのツリーは存在感抜群。
「どう?これで、お客さん増えると思う?」
聖子さんは、ため息まじりにそう言った。
私は、大きなツリーが好き。
だから、その場をなかなか離れることができずにいた。
また思い出す。
お父さんに連れて行ってもらったどこかの遊園地で見たツリー。
この牧場のツリーの灯りと同じ、ブルーのツリーだった。
1秒ごとに色を変え、クリスマスソングとともにキラキラと輝く。
あれはどこの遊園地だったんだろう…
大きなツリーを見ながら、ポテトを食べていたような気がするけど、その記憶も曖昧だった。