じっと見つめる視線の先には
何が見える?
昔の風景だね…
隆介が汗を流して、涙を流した青春。
私の知らない隆介が、今、ここに甦る。
聞こえるよ。
たくさんの歓声。
眩しい太陽に照らされた隆介が、キャッチャーミット目掛けて…
投げる…!!!
バシ!!
壁に当たったボールがゆっくりと私の方へ転がった。
初めて見た隆介の投げる姿。
初めて見た隆介のフォーム。
すごく
素敵で
ますます
惚れちゃうよ…
そして、
あんたの優しさが
心に染みるよ。
「もうお前の知らない俺は…いないだろ?」
そう言って、グローブをつけた手で頭を叩く。
「隆介…!!」
思い切り抱きついた隆介の体は、青春の香りがした。
隆介…
大好き。
「これ、やるよ。俺の大事な思い出のボール・・・」
隆介は、ボールを私の手の平に乗せて、私にキスをした。
ライトに照らされた2人は、今が夜だということも忘れそうだった。
まるで、眩しい太陽を浴びているかのよう。
「俺の一番大事な人に、俺が二番目に大事なボールを持ってて欲しい。」
いつから、こんなに隆介はキザなセリフが言えるようになったんだろう。
私は嬉しいのに、恥ずかしくて、泣きそうで…
ただ、うつむいて頷いた。