「私…隆介が初恋だったんだ。でも、叶わない恋だと思ってた。まさか、隆介が私を好きでいてくれてたなんて…夢のようで…信じられなくて…それで、一番大事なはずの健太を傷つけた。」
一気に話した鈴子は、大きく息を天井に向かって吐いた。
私は、鈴子の気持ちも理解できたんだ。
昔に諦めた恋が…
隆介の『好きだった』っていう罪な一言のせいで
また動き出してしまったんだ。
けじめをつけたかった隆介の気持ちもわからないでもないけど…
女心をわかってない。
封印してた気持ちが溢れ出すのに、時間はかからないんだ。
すぐに昔のドキドキやときめきを思い出しちゃうんだよね。
「隆介と付き合いたかった?」
私は、いつの頃からかコーヒーをブラックで飲むようになっていた。
これも隆介から教わったこと。
「どうかな…私には、健太が合ってる。健太は、きっとずっと不安だったと思うんだ。口には出さないで、いつも優しく愛してくれてきたんだ。」
鈴子が健太の話をするときの顔が好きだ。
少しだけ照れたような、口元が緩んだ顔。
「健太に結婚したいって言ったら、喜んでた?」
私の質問を聞きながら、鈴子は顔を赤くした。
「うん…健太、泣いてたんだ。もう、迷わない。本当に、健太しか好きにならない。」
鈴子は、そう言って自分に言い聞かせるように何度も首を縦に動かした。
喫茶店の奥から、時計の鳴る音がした。
それから、高校時代の3人の話を聞いた。
隆介がすごくかっこよかったことや
健太と隆介どっちも選べないくらい好きだったこと…
学校では隆介派と健太派に分かれるくらいに有名だったこと…