「今日は、報告があって…」
今日の鈴子は、同じ歳だと思えないくらい大人っぽかった。
巻き髪を耳にかけると、キラキラ光るピアスが見えた。
テーブルに視線を落としたまま、紅茶を飲む鈴子は…
私の知らないことをたくさん知っているような…
遠い世界の人のように見えた。
「健太にプロポーズしたんだ…まだまだ先だけど、一生一緒にいたいのは健太だって…」
鈴子はやっと目を合わせてくれた。
少し、頬の筋肉を緩めて…
にこっと笑う。
「え!!本当??やっぱり、健太が好きなんだね。」
ついこの前まで、私の最大のライバルだったとは思えないほど、鈴子と私の間には温かい空気が流れていた。
これも…
りゅーたんのおかげかな。
「本当に今までごめんなさい。私…美亜ちゃんを苦しめてたね。」
鈴子は、前髪をかきあげて、眉を少し下げた。
「私こそ…いろいろごめんね。」
無意識に謝っていたけど、謝るようなことをしたのかどうかわからない。
きっと、私じゃなかったら…
もっと鈴子に対してひどいことをしていたんじゃないかな。
だって…
彼氏を奪おうとする女は…
本当に憎くて…
怖い存在だから。
ひげを生やしたマスターが、ゆっくりとコーヒーを運んできた。
ごゆっくり…という声がとても優しかった。